いとし、いとしという心2 かわい有美子
- 2009/12/07(月) 00:25:41
このまま一緒にいれば、いつか壊してしまう。侑央が自分のものとはならない嫉妬で、いつかずたずたに傷つけてしまう。振り返らない荘一をけなげに想いつづける侑央を、苛立ちのあまり滅茶苦茶にしてしまう。二度と取り返しのつかない、深い疵をつけてしまう。
だからその前に…と千秋は思った。
ここから離れよう。
庇護という名の独占欲で、雁字搦めにしてきた腕の中から侑央を逃がそう。
「ユキウサギ」と「啼かぬ蛍が」の2編が収録されています。
雑誌の方は読んでなかったので、1巻目の後日談だとばかり思って読み始めましたが、「ユキウサギ」の方は高校時代の話でした。
ほぼ千秋視点で書かれています。子供の頃からずっと好きだった侑央が、兄荘一に惹かれているという事実に気付いて、話し方を兄に似せたり、結構涙ぐましい努力家(?)です。
千秋という男は、適当に女の子とも付き合ったり、侑央を手に入れるために策略を巡らしたりしてますし、作者は「陰険腹黒のヤンデレ男」と書いてますが、私にはずいぶん一途でけなげな男に見えました。(笑)
「ユキウサギ」のラストで、侑央の元から離れる場面。
バスの窓から、こちらに気付いてない侑央を目で追いながら、「バイバイ、ユキちゃん」という場面ではうるうるしました
「啼かぬ蛍が」の方は、1巻の後の話です。
二人とも跡取りだし、これからもいろいろあるでしょうけど、二人とも案外前向きだし、きっといい方向に行けるだろうと思えました。
とてもよかったです。
いとし、いとしという心 かわい有美子
- 2009/11/30(月) 00:49:20
「ボク、ユキちゃんの何でも話せる幼馴染みになりたいんとちがうで」
信号待ちの間、何を考えているのかよくわからない横顔を見せたまま、低く千秋は言い捨てた。
「恋人になりたいて…、そう言うてるねん」
2巻目を買ったのに、まだ1巻目の感想を書いてませんでした。
端的に言うと、幼馴染みで、喪服未亡人で、京都の情緒BLです。
5つ年上の、温厚で完璧な兄荘一とずっと比べられてきた千秋と、荘一に幼い頃から憧れ、密かに想ってきた侑央(ゆきひろ)の物語。
物語はその荘一が亡くなったところから始まります。
幼い頃からの片想いの相手を失った侑央の悲しみと、それをもどかしい思いで見つめる、これも片想いの千秋。
まあ、千秋は交換条件を出して侑央を抱くわけですが、この本で一番印象的なのは、侑央の色っぽさ。
着物が似合う美貌の未亡人を読みたい方にはお勧めの一冊です。
幻の恋人 大鳥香弥
- 2009/11/16(月) 01:06:22
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「そうだよ。信一が知らなかっただけで、僕はずっと信一に恋をしていて、信一に恋の相談を受けるたびに相手の女に嫉妬しながら相談に乗って、告白の日は『ふられろ』と祈ってるような人間だったんだ!」
女装ものなので、嫌いな方はご注意下さい!
親友に長い間ずっと片想いしてきた大学生の俊が、女装して親友信一をだます話です。
でも、最初からだますつもりではなかったんですよね。恋人同士で参加するイベントに一緒に行ってくれる女の子を紹介してくれと言われて、一日だけ恋人みたいに過ごしたかっただけで。
会ったとたんに「お前、何やってんだ」って感じになるはずだったのに、鈍感な信一は全然気付かずに、幻の女のぞみに恋してしまいます。
しかも信一の従兄の正樹までが、のぞみにアタックをかけてきて。
どうしてももう一度会いたいという信一の情熱に負けて二度目に会った日、告白されて断るはずが、「今は返事をしないでくれ」と言われ、そのまま断れずに帰ってきてしまいます。
そうして三度目。これが本当に最後で、今日こそ断ると決心したその日に、訪ねてきた信一に女装しかけの姿を見られ、すべてがバレてしまいます。
激怒され、「気持ち悪い」「顔も見たくない」と言われた俊の悲しみが切なかったです。
誰のせいでもない、自業自得だとわかっているから、よけい辛いんですよね。
謝りに行って無視されて、また泣いて。
でもラストはちゃんといい結末が待っていてよかったです。
正樹がいい人で、ちょっともったいない気もしました。
でも「いい人」と「恋する相手」はやっぱり別なんですよね。
他所様のブログで酷評を見たので心配だったけど、大丈夫でした。
好みは人それぞれですね。私はこれ、好きです。
兎オトコ虎オトコ 本間アキラ
- 2009/11/09(月) 01:21:40
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「ジャンケンしてセンセイが勝てば逃がしてやるよ。そんかわり俺が勝ったらあきらめて服脱げよ?」
背中に虎の入れ墨を背負ったヤクザさんと、うさぎのようにビクビクな勤務医の話。
実物のヤクザは嫌いだけど、この虎さんはどうにも憎めない男でした。
出会いは拳銃で撃たれて道端に倒れているヤクザさんを、うさぎさんが運悪く見つけてしまうシーン。
恐そうなヤクザがネコになつかれてて、動物には弱いと聞き、「いい人かも」と思った瞬間、「人間なら容赦なく殺せるんだがなぁ」というつぶやきを聞いてしまうシーンとか、ジャンケンのシーンとか、笑いました。
初めて読むマンガ家さんですが、とても面白かった。
他のも読んでみたいです。
人はなぜ働かなければならないのか 山田ユギ
- 2009/11/01(日) 22:26:37
bk1
「大丈夫、あんたがどんな変態でも、俺は受け入れますよ」
「変態はおまえだ!」
表題作は、さえない先輩リーマン38歳×できる後輩リーマン28歳。
後輩くんが隠していた先輩への想いがばれたとき、後輩くんは開き直ってアタックを始める話です。
ユギさんらしいギャグがあちこちで炸裂してました。
後輩くんの妄想が楽しかったです。
『closed』
短い耳かき話で、エロシーンはないのに、なんとなくエロいです。
『僕らはただ走るだけ』
高校大学会社と、先輩を追いかけてきた後輩の話。
「何でもっと早く言わなかったんだろう」って、ほんとですよ、あなた。
『CALL ME』
地球の裏側との遠距離恋愛話。電話だけって、やっぱり不安で寂しいですよね。
でも日本に帰れてよかった。それでもやっぱり遠距離だけど。
ユギさんの本なので、カバー裏も忘れずに見て下さい。
妄想対決は笑えます。
はつ恋 榎田尤利
- 2009/10/25(日) 23:05:30
bk1はこちら
先生にならなんだってあげていい。お返しは、なにもいらないよ。
生きていてくれれば、それでいいよ。
人当たりはいいけれど、心の中は冷めた31歳の弁護士久我山は、高校時代の担任曽根の通夜に出席した帰り道事故に遭い、なぜか高校時代の自分に戻ってしまいます。
体は高校生、中身は31歳の弁護士。
すっかり忘れていた高校時代の自分を再び体験するとき、14年前には見えなかったものが見え、以前はろくな印象もなかった曽根に惹かれていきます。
曽根がゲイで、DV男(彼も同じ高校の教師)と付き合い、暴力を受けていることや、自殺の原因となった借金のことなど、少しでも力になろうと努めますが……。
この作者さんのファンタジーは、『永遠の昨日』以来だったかな。
あれも大好きな作品ですが、これもとてもよかったです。
永遠の昨日の方は、悲しい結末でしたが、今回のは何度も読み返しそう。
曽根視点の『はつ恋のゆくえ』も、短いけどラブラブな感じでよかったです。
篝火の塔、沈黙の唇 玄上八絹
- 2009/10/19(月) 00:06:40
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「お前がたとえ人殺しでも、こんな塔に送られたのでは、…哀れに思う」
ここは地獄なのだと、椿は言う。
「力、ない…私を許せ……」
敷島家の嫡男として生まれながら、幼い頃から盲目の椿は、島の灯台に閉じこめられ、腹違いの兄たちの慰み者にされている。
没落した武家の子だった十佐は、下男としてその島にやってくるが……。
初めて読む作家さんです。
実の父は亡き母を愛するあまりに椿を陵辱し、その父亡き後には、腹違いの兄たちは椿を憎んで弄びます。
描写はかなりエロくてややグロいくらい。
自分的には、一途な下男攻め×美貌の可哀想受けは好きなんですが、エロシーンがややくどくてちょっとお腹いっぱいになりました。
ストーリーも雰囲気もいいので、陵辱ものが大丈夫な方にはお勧めできます。
YES IT'S ME ヤマシタトモコ
- 2009/10/13(火) 23:34:38
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「おれが好きなのはおれだ」
「知ってるが?」
「だ、だからおれとおれは両思いであってだな…?」
「結構なことじゃないか」
表題作は飄々としたキノコ男×超ナルシスト男。
二人は幼なじみで付き合い歴は長く、幼稚園から小中高大学を経て、現在はベンチャー起業の社長(キノコ)副社長(ナルシスト)。
ナルシストの方は、「おれを振り返って見られる他人がうらやましい。おれもおれとすれ違って振り返ってガン見したい」という変な発想にまで至ったかなりぶっとんだレベルのナルシストでした。
まあ、かなり変なカップルだけど、それなりにラブラブなんで、読んでいて楽しかったです。
そのほかでは「夢は夜ひらく」が好き。
女の子になりたかった男と、170を超える身長を持つ女の、二人の美容部員の話。
BLとはちょっと違う感じだけど、表題作と共に、何度か読み返してしまいました。
蛇とワルツ 榎田尤利
- 2009/10/03(土) 22:19:45
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「確かにあんたの孤独はあんたにしか持てない荷物だ。俺は手伝ってやれない。でも、疲れたら俺に寄りかかって休めばいい。荷物を持ったまま、ガパッと体重を預けてさ……俺はあんたより十も下だけど、若い分体力はあるぞ。でっかい樹の幹みたいに、あんたを支える。ぐらついたりしないように、せいぜい踏ん張るさ」
Pet Lovers シリーズのラストは蛇です。
問題ありで手放され、よそから流れてきた若い蛇杏二を、オーナーの仁摩自ら研修に当たりますが、引き締まった肉体と野性的な美貌を持つ彼は、とんでもなく扱いにくい相手でした。
それでも彼が時々見せる別の顔を知り、心を開きかけたとき、杏二に対するある疑いが芽ばえ……。
仁摩の初めての男、袴田との微妙に気になる三角関係もあり、事件もありで引き込まれ、一気に読みました。
登場したときの傲慢で怠惰で手に負えない蛇と、懐いてからのスキンシップ過多な面倒見のいい年下の男との落差がなかなかよかったです。
これでこのシリーズは終わりだそうですが、ちょっと寂しいですね。
征服者は貴公子に跪く いつき朔夜
- 2009/09/28(月) 00:05:07
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「私の仕事は王子だと言われました。でも、ただ身綺麗にして上等の部屋に暮らして、自分では何も作らず生み出さず、高価なものを買い与えられているだけなら、金に目がくらんだと言われてもしかたがないでしょう」
牟田のこわばった顔に、傷ついた表情が浮かぶのがわかった。だが、なぜ彼が傷つくのかがわからない。その言葉によって貶められているのは自分なのに。
15歳で両親を失い、後見人になった叔父に財産を使い込まれ、借金を残して逃げられたパウルは、城をホテルとして使いたいという牟田に売り渡す契約をした。
しかしその契約には、パウルはこの城の王子として住み続けるという条件が付けられていた。
実業家牟田×ゴルトホルン城の元城主パウル・フォン・ヒルシュヴァルト
舞台はドイツです。
パウルはどこから見ても王子様で、優しく、でも毅然としたところもあります。
一方の牟田は、いつも難しい顔をした、取っつきの悪い男。
最初は牟田に対して反感を持っていたパウルですが、お互いにいいホテルにしようという共通の目的を持って動いていくうちに、次第に牟田に惹かれていきます。
雰囲気もよく、面白く読みました。
でも、ダンスの練習の場面で、ワルツなのに「スロー、スロー、クイック」はないです。
ワルツは「1、2、3」ね。
同級生 中村明日美子
- 2009/09/22(火) 00:00:10
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でもいい
どーでもいい
お前がそばにいるから
それだけでいい
底辺校に通うチャラ男草壁×優等生佐条。
なんとも甘酸っぱい青春ストーリーです。
佐条は高校入試のときに電車の中で倒れ、それ以来乗り物が駄目になり、結局入試にすべて落ちてこの高校に来たという、ある意味場違いな生徒。
一方の草壁は、バンドを組んで毎日を楽しんで生きているタイプ。
二人ともいいけど、個人的にはグータラ教師のハラセンがとても好きです。
佐条にときめきながら、「いや、でも教師と生徒だし。大人なら卒業まで待とうではないか」とか思っていたら、草壁にさらわれてしまった可哀想な男。
なんかくたびれたおっさんの悲哀を感じて、いいです。この人。
no reason −恋に堕ちる− 可南さらさ
- 2009/09/13(日) 23:34:09
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「あいつと今一緒にいるの、しんどいんだよな…」
ぼそりと呟かれた言葉が、冷たく尖った杭のように、心臓に深く突き刺さった。
人と関わることが苦手な柚木は、その大きな原因になった幼なじみ一成を苦手にしていますが、一成の方は冷たくされてもめげずに、何かと接近してきます。
実は一成自身は自分の過去の幼い行動で柚木を傷つけたことを後悔してるんですね。
好きな子にちょっかい出して嫌われた男の子のその後という感じです。
まあ、とにかく一成のけなげなこと。
ちょっとでも柚木に構ってほしい。柚木と一緒にいたい。柚木の役に立ちたい。
そういう強い気持ちが微笑ましくて、よかったです。
それからちょっとした思いのすれ違い。読者から見れば、お互いに思っているのは明白なのに、偶然立ち聞きしたセリフに悩んだり、本当に甘酸っぱい感じの高校生同士の初々しい恋物語でした。

